地方都市のかっこよさ

横浜市で3年に1回行われているアートイベント、横浜トリエンナーレに行ってきました。複数に別れたイベント会場のひとつ、新・港村では、さまざまなNPOやアートイニシアチブの活動が紹介されており、延岡のプロジェクトにも参考になりそうな取り組みが沢山あり、刺激になりました。その中でも特に目を引いたのは、八戸市まちづくり文化観光部が行っている八戸ポータルミュージアム「はっち」で開催された「八戸レビュウ」という写真展でした。若手の写真家を3人起用して、八戸の市民の方々の生活や物語を撮影したのですが、その中でも梅佳代さんの写真が抜群によかったです。

梅佳代さんといえば、おじいさん、おばあさん、家族、近所の小学生達を被写体に、びっくりするほど生き生きとしてユーモラスな写真を撮ることで有名ですが、家族へ向けていたのと全く同じようなまなざしが八戸の市民の方に注がれていたのが印象的でした。上からの目線でもなく、地方都市の文化を守ろうといった押し付けがましさもなく、さらに情緒的でもなくて、そのかわりに、ドライでユーモラスで愛情深くて、あたりまえのように地方での暮らしを楽しさと共に向き合うような姿勢が画面から伝わってきたのですが、かなり感動しました。ううむ、梅佳代さんはやっぱりすごい!それだけではありません。写真を見ていたら、地方都市での暮らしが都会のものよりもかっこよく感じてきたのがよかった。

最近、地方で様々なタイプのデザイナーやアート関係者が頑張っておられることが話題にあがるようになってきましたが、その理由のひとつに、東京などの大都市よりも地方のほうがかっこいいような気がする、というほのかな感覚があるように思います。都心に大型商業文化施設がふえるたびに東京全体が観光地っぽいダサさを呈するようなることと平行して、固有の文化を現代の消費生活とみごとにハイブリッドさせながら醸成している地方の面白さがきらめいてみえてきているわけです。

実をいうと、地方都市でデザインとかアートってどういう意味があるのかなあ、デザイナーが地方にはいっても教条的にデザインを押し付けるだけじゃないのかなあ、なんて思ったりすることもあるのですが、梅佳代さんの写真をみていてそうした気持ちが一気に吹き飛びました。そうか、皆、地方が面白いから地方に行くんだな!と明確に認識できたのです。

そうした感覚は延岡の関係者間でかなり共有しつつありますが、それをうまくメディア化する方法はないものかなあと思いました。すこしずつ知恵をしぼらないといけないですねえ。

inui