サテライトミュージアム。

お盆で帰省した帰り、羽田空港の第2ターミナルで横山大観の作品を展示しているというポスターをみかけました。横山大観は明治〜昭和にかけて活躍した、文字通り日本画の巨匠です。富士山を題材にした多くの画は知られている事でしょう。

その大観の作品が羽田空港でみられるという事で、"大方、模写とかじゃないかなあ"と思ったのですが、ところがびっくり、オリジナルの作品が沢山。しかも大観の作品だけでなく洋画家の梅原龍三郎による大観のポートレート、書簡なんかもあって一級品の資料でした。さらにはこの名品をみながらゆっくりとくつろげるソファーが沢山あり、面白いミュージアムグッズまで置いてありました。それも入場無料。

一体この"Discovery Museum"と名付けられた展示施設はどこの機関が手がけているのだろうと思って確認してみると、細川家関連資料を収蔵している永青文庫が運営していました。

公共性の高い空港や駅といったターミナルに美術品などの資料を展示するのは一定の集客が見込めるし、コミュニティスペースとして色々な可能性を持っています。現在改装中の東京駅の"ステーションギャラリー"は、赤煉瓦の空間を活用したすばらしい美術館ですし、由布院駅"アートホール"は現代作家を中心とした人気の展示空間です。

羽田の"Discovery Museum"が他と違うのは、母体となる永青文庫という組織があって、そこが資料を空港で展示しているという点です。出先の展示空間、いわばサテライトミュージアムとでも名付けられる場になっているのが大変ユニークです。

問題点として、博物館側が一歩ひいてしまうのは、人通りの激しいターミナルは資料の保存環境が必ずしもよくないという点があります。客が休める空間、特に飲食出来たり、大きな荷物を沢山持っている人が大勢来たりする場所だと、資料を汚損してしまう恐れがあります。

そういう条件を考慮しながらも、では延岡駅でこうしたサテライトミュージアムの可能性を考えるのは難しいでしょうか。延岡には内藤記念館をはじめ、資料展示を主体的に行える機関がありますし、横山大観のような優品でなくとも、来場者が時には触って楽しめる生活道具や、地域の記憶を物語る歴史資料が豊富にあります。さらには、野生生物や昆虫・植物などの豊富な自然環境を題材にしても面白いかもしれません。そういう事に詳しい方も、延岡には多いのです。

こうした資料を季節や月ごとに展示替えしてみて楽しめるコーナーがあればとても素敵ではないかと考えています。

#実は過去、駅周辺を利用してこうした試みをやってみようとした事がありますが、この話はまた別の時に。


yamatosh