日立駅視察

はじめまして。乾事務所の村國と申します。

先週末、JR常磐線日立駅に視察に行ってきました。2011年4月に竣工した新しい駅舎であり、日本を代表する女性建築家である妹島和世氏がJR東日本との恊働で設計をしたものです。建築の雑誌にも取り上げられており前々から気になっていました。

特徴はなんと言ってもガラス。総ガラス張りの橋上駅です。ガラス張りの建築というとどうしても美術館や高級ブティック等が頭に浮かびハイカルチャーの象徴という感じがしてしまうと思います。実際、妹島氏はそんなハイカルチャーガラス建築を数多く手がけてきたことでも有名です。駅は来る人を限定せず、公共性が高く、まちの人々の日常の一部として存在する場所、言ってみれば、ハイカルチャーの対極に位置する場です。そんな場所でガラスはどう使われているのか、本当にうまくいっているのかと、半信半疑の気持ちのまま三時間電車に揺られ曇天の下、太平洋岸の駅舎に到着しました。

到着後グルッと駅の中を歩き回ってみて、ガラス張り建築への疑いがだいぶ晴れました。公共性の高い日常の場にこそガラスによる透明感がいかされていると感じたからです。

天気の悪く暗い土曜の午後、それほど多くの人がいる訳ではないのですが、電車を待つ人、駅前広場の様子、カフェでおしゃべりしている人などがちらほら見えます。人数は少なくても誰かの様子がいたるところで感じられる安心感がありました。

また、待合室が一カ所にまとまっておらず、ベンチが散在しているので着かず離れずの他人との距離を保てるのも大切な要素だと感じました。自分が何をしていても他人の視線があまり気にならない落ち着き感があります。実際僕が、メジャーで手摺のサイズを計りメモをとったり、じーっと天井の隅っこを観察していてもそんなに他人の目線が気にならなかったくらいです。

そのような「とおくはなれてそばにいて」的な感覚は現代の社会でとても大切な要素だと思います。そしてその見える安心感と見えるけど距離感のある関係をうまく保っていたのがこの総ガラス張りの駅舎の魅力でした。ハイカルチャーの象徴としてのガラスがここまで市民権を得た姿を目の当たりにできたのが今回の最大の収穫です。

ただし、いいところばかりでもありません。どこもかしこもガラスであるということから生じる技術的な問題点もたくさん見受けられました。ガラスを使う時、どんな所に苦労が隠れているのか、どこまで考えなければいけないのかという課題もたくさん見えてきました。

これから時間をかけてどんな駅が延岡にふさわしいのか、延岡の社会的、文化的背景をふまえ、技術的な側面の融合を考えていくことが必要です。検討は続きます。

murakuni