1000本のマチアカリ

【ささやかなXmasイベントが、与えてくれた元気(プロフェショナル・仕事の流儀風味)】

 とても寒い夜だった。でも、「マチアカリとキミの温もり」のイベント名にふさわしく、なんか心が温かくなった夜だった。

 クリスマスにあわせて、街もお洒落させたい。そんな思いでこのイベント準備がはじまった。昨年若い仲間たちが、駅前広場をちょっとしたデートスポットにしたいと率先してキャンドルを飾ってくれた。その刺激を受けたのがきっかけではあったが、どの場所で、どんなカタチでやろうか少し悩んでいた時期があった。

その悩みをふっきり、この場所しかない。とぼくらを本気にさせてくれたのは栄町サンロードに新しく出店した「小さな絵本屋さん」の女主人の一言だった。「私達の世代にとって、栄町はとてもお洒落で、ワクワクする街でした。でも店をだしてみて、人も歩いてなければ、お客さんも来ない。とても寂しい。」商店主としての不満というより、心からの寂しさが僕らを刺激した。

 私もその女主人と同世代。20歳代のころ、その通りを挟んでアヅマヤと寿屋の大型店があり、この季節になるとその通りは買物袋を両手に抱えた人でごった返していた。カラータイル張りでモニュメントも飾られた通りにはお洒落なビルが立ち並びブッテックや靴屋さん、通りを見下ろすガラス張りの喫茶店、そしてフォーストフードやアイスクリーム屋が軒を並べていた。

 お洒落だったビルは今シャッターを降ろし、広いガラス張りの窓は夜の空と同化している。美しくキレイだった景色の街だったぶん、人の通らぬ道は一層寒々としていた。
 この街に、賑わいをかつてのお洒落な街に取り戻したい。せめてクリスマスの夜ぐらい、お洒落な通りを輝かせてみたい。ココレッタとして連動させることで、何かをはじめたい。そうして、このマチアカリが出来上がった。

 それは、まだ小さな、ささやかな賑わいづくりだとわかっている。でも、こうしてオトナから子どもまで参加して、ペットボトルキャンドルをつくり、1000本以上を通りに並べ、一つ一つに水を入れ、ローソクを浮かせ、そして火を灯して街を彩り、訪れた人々に小さな幸福を提供できたことは、これから私たちの街ではじまろうとしている新しいまちづくりにとって大きな一歩であることは間違いない。

 栄町サンロード商店会の会長も「これからだよ」と自らも灯した火を見つめ、この火を絶やさない想いを募らせた。僕らも時より吹く冷たい木枯らしに揺れ、消えかかる炎を消すまいと通りをチャッカマンを手に走り回りながら同じ思いを持った、寒くてもなんだか熱くなるクリスマスの夜だった。

fukuda